LOGIN「ダン、おはよう」
食事の支度をしながらこちらに笑いかける姿に懐かしさがこみ上げてくる。私たちがまだ共に生活していた時、こんな光景が沢山あったわね。
エデンに近いからか、昨夜はダンと暮らした記憶がぽつぽつと思い出された。
ソファから立ち上がり、ダンの手伝いをする為に彼女のもとへと向かうと、すでにテーブルの上には美味しそうな食事が並べられていたのだった。
「まぁ……凄いわ。これ、全部ダンが用意したの?」「お主と寝食を共にするのは久しぶりだからな。少し張り切りすぎたか?」
ちょっと照れている彼女が可愛くて、思わず抱きしめる。姿も小さいし、自分の子供のように感じてしまうわ。
「な、な、なにをするっ!」「ドミニク、よく来てくれたな。クリスティーナも……先日は世話になった」 翌日さっそく王宮に赴き、広めの応接間へ案内された私たち。 そこには国王夫妻にディクセル王太子殿下やシェリアン王女殿下も待っていて、真っ先に陛下が挨拶をしてくれたのだった。 「兄上、みんなも……集まってくれて感謝する」 「お前の方から大事な話があると言ってきたのでな……私との話で答えが出たのかと思ったのだが」 「はい。そして今日はもう一つ大事な話もあり、ティナも連れて参りました」 「そうか。まずはドミニク、お前の答えを聞かせてくれ」 ドミニク様はこちらをチラリと見られたので頷くと、陛下の方へ向き直り自身の気持ちを話し始めた。 「王族に戻る事を決めました。ティナとも話し合い、それが最良かと考えた次第です」 「そうか。クリスティーナもそれで良いのだな?」 「はい。ドミニク様の意志が私の意志ですので。私もようやく全ての力が解放されましたから……彼を、そしてこの国を全力で守りたいと思っております」 「全ての……?そう言われてみれば髪の色が……古の魔女が復活したという事か」 私の言葉に陛下が少し複雑な表情をした。 始祖の魔女の力はとても強力なのは私自身も感じている……この力が利用される事になれば世界が恐ろしい方向へ向かってしまう。 「彼女につきましても東の皇帝陛下がこちらに接触してきました」 「なに?!」 ドミニク様は昨夜の出来事を皆さまに話していき、皆が一様に驚きを隠せない様子を見せる。 バズズ様は全く悪い人には見えなかったけれど、皇帝陛下はどのような方か分からないし、目的も不透明だ。 脅しをかけてくる事がないといいのだけど―――― 「ふーむ……バズズ騎士団長か。その名は聞いた事があるが、実際にはどのように感じた?」 国王陛下がドミニク様に尋ねると、ドミニク様はとても言いにくそうに答えた。 「恐らくまともにやり合えば、我が国の者で敵う人間はいないでしょう……皇帝陛下はそれ以上に感じました。昨夜ももしティナがいなければ我が邸の者たちは皆殺しにされていてもおかしくはなかった」 「それほどまで…………」 「しかし皇帝陛下の真の目的が分からないので、敵か味方かも分かりません」 私たちが緊張感を持って話をしているところに、突然応接間の扉が開かれ
私はエントランスホールでドミニク様が戻ってくるのを待っていた。 鎧を纏った大柄な男性……その方はとても強そうに見えたので、ドミニク様が無事に戻ってくるかが気が気じゃなくて。 魔女の力を使って邸からは出られないようにしているので、逃げられる心配はないと思うけれど……戦いになったらどうしよう。 でもそんな私の心配は杞憂だったようで、すぐにエントランスホールの扉は開かれ、ドミニク様は私が透視した大柄な男性と共に戻ってきたのだった。 「ドミニク様!」 「ティナ、待たせたね。心配かけてすまない」 「いいえ、ご無事で何よりです……!こちらの御方が?」 「ああ、帝国の騎士団長を務めるバズズ殿だ。先ほど少し話をしたんだ」 「ここでお話するのはお体が冷えますので、こちらへ……」 私はドミニク様とバズズ様を応接間へと誘い、ノエルたちにお茶の用意をお願いしたのだった。 ドミニク様と隣同士にソファへ腰をかけ、バズズ様と向かい合う。 帝国騎士団長――――見た目だけでも物凄く強そうで、とても優秀な方だというのが分かる。 ドミニク様も大きいけれど、それ以上に大きくてガッチリしているわ。 グリーンの短い髪に顔には幾つかの傷、寡黙で実直そうな方。 きっと皇帝陛下がとても信頼しているのでしょうね……だからこそ公爵邸の見張りを任せたのでしょうし。 まさか邸から出られなくなるとは思ってもいなかったのでは。 「バズズ様、初めてお目にかかります。クリスティーナと申します。突然邸から出られなくしてしまい、申し訳ございません」 「は……い…………あ、いえ。こちらこそ、ご挨拶が遅れて申し訳ございません。帝国騎士団長を務めるバズズ・モンテティードです。白の魔女様にお会いでき、光栄に思います」 「私が白の魔女だとお分かりになるのですか?」 「ち、違うのでしょうか」 「いえ、違いありません。バズズ様は勘がよろしいお方ですのね」 なるべく印象を悪くしない為に笑顔で答えると、ドミニク様に苦笑いされながら指摘されてしまう。 「ティナ、私の婚約者は白の魔女って広まってしまっているから、きっと皆が分かると思う」 「それもそうですわよね……私ったらとぼけた事を言ってしまいましたわ」 ちょっと恥ずかしくなって肩をすくめていると、寡黙そうなバズズ様がフッと笑顔を見せた。
「まったくぼっちゃんは!クリスティーナ様が死んでしまいますでしょう!」 「すまない……」 「愛するお方が出来た事は非常に喜ばしい事です。でも節度というものがございますよ!クリスティーナ様はぼっちゃんのように体力は……」 私たちはソファに腰をかけながらノエルに説教をされていた……怒られているのは主にドミニク様だけれど。 私が飲まず食わずでぐったりしているように見えたから、らしい。 ノエルやリジーたちが色々とお世話をしてくれたおかげで、私たちはやっと寝室から出てお風呂に入ったり食事をとったり色々と人間らしい生活に戻る事が出来た。 でもドミニク様だけが悪いわけではないし、延々と怒られている彼が可哀想になり、ノエルとドミニク様の間に入ったのだった。 「ノエル、ごめんなさい。私も悪いの。一緒にいられるのが嬉しくて、離れがたかったものだから」 「ティナ……」 「いいえ、悪いのはぼっちゃんです。もとはといえばぼっちゃんの失言からこのような事態が起きたのですから、ちょっとやそっとじゃ許しませんよ!」 ああ、ますます怒らせてしまったみたい……ドミニク様の方をチラリと見ると、申し訳なさそうにしながらもウィンクしていた。 これはノエルの怒りがおさまるのを待とうという作戦なのかしら。 私はなんだかおかしくなってしまい、ノエルに申し訳ないと思いつつ笑ってしまう。 そしてこんなにも心配をしてくれる皆に感謝の気持ちを伝えたくなったのだった。 「ノエル、ありがとう。それに皆も。こんなに心配してもらえて、とても嬉しいわ」 「クリスティーナ様……そんな事を言われたら、もう怒れないじゃないですか。あなたというお方は……ご無事に帰られて何よりですよ」 ノエルがほんの少し涙ぐみながら
彼女が姿を消してから数日経ち、公爵邸はとても静かになっていた。 ノエルは元気がないし、リジーも大人しい。 料理長のディエゴも口数が少なく、執事のグラースは前にも増して口数が減ってしまった。 ティナがいない事でこんなに皆が水を与えられていない植物のように萎れてしまうのかと、彼女の存在の大きさを実感する。 もちろん私も……いつ帰ってきてくれるかは伝えられていないので、待つしかない。 ただ待つしかないというのは辛いものだな。 誰に言ったとしても自業自得なので仕方ないのだが。 自虐的になりそうなのを振り切るように、執務室で兄上に手紙をしたためていた。 「グラース、仮に私が王族に戻ると言ったらどうする?」 「は……王族に?」 「ああ。大切な者を守る為に必要になるかもしれない」 「……それでしたら歓迎いたします」 グラースは清々しいまでの笑顔を向けた。 彼は執事らしく余計な事はあまり話さないし、表情も崩さない。 そんな彼がこのような笑顔を向けてくるとは思わなかったので、面食らってしまう。 「なぜだ?」 「白の魔女様とご婚約されて、さらに権力を得たいが為に王族に戻りたいのでしたら反対でした。旦那様が王位継承権の為に苦しんできたのも知っておりますので……しかし大切な者の為ならば、お立場に執着する事もなく、必要なくなれば捨てる事も出来ましょう」 「そうか」 「はい。きっとクリスティーナ様も旦那様の決断を後押ししてくれるでしょう」 「そうだな。彼女はそういう人だ……まだ決めかねているが、彼女が戻ってきたら自分の気持ちを話してみるよ」 「それがよろしいかと」 グラースと話し終えた後、執務室で仕事を終え、寝室へと向かった。 ベッドに腰をかけると、窓の外には煌々と光る満月が。 ちょうどティナと結ばれたのも満月―――― あの時の彼女もこの世のものとは思えないほど美しく、可愛らしかった。 たどたどしく私への気持ちを口にして……早く会いたい。 そんな事を考えながら窓の外を見ていると、ほんの一瞬だけ邸の外が光り輝き、すぐに消えた。 恐らく執務室の窓から……まさか…………逸る気持ちを抑えながら執務室へと駆けていったのだった。 ~・~・~・~・~・~ 彼女じゃなかったらどうしようという気持ちと、戻っていてほしいという気持ちがせめぎ合う。
ティナが倒れ、アロッサ村から急ぎ邸へ帰邸するもベッドに寝かせた彼女はまるで起きる気配がなかった。 「我が見ておるから、大丈夫だ」 「申し訳ございません」 オブシダン様のご厚意に甘え、寝室を後にする。 カルロ王子と話す事があり、ティナのもとを離れなければならなかったのだ。 しかしこの時にカルロ王子が放った一言が呪いのように私を蝕んでいく。 「あなたはクリスティーナに相応しくないよ」 何も言い返せなかった。 相応しくあろうと思っているのに、彼女に対して何もできていない。 ティナが他国から狙われても、私は共に逃げる事しか出来ない。 この手で守る為の地位もなく、共に生きるだけとは……本当に彼女に相応しいと言えるのか? そんな思考がぐるぐるしながら目覚めたティナと寝室に連れて行くと、彼女から一番聞きたくない言葉を告げられてしまう。 「きっと私の力も解放されると思うのです!そうすればドミニク様のお役にも立てますし……!」 私が頼りないから、守ってあげないといけない存在になっているというのか―――― 何かある度に彼女の力に守られながら生きていけばいいと……? 「役に立つとか考えなくてもいいんだ、君がそばにいてくれるだけで私は幸せなんだから」 まるで自分への言葉のようだ。 地位など必要ないと捨てて生きてきたのに、今になって惜しくなったというのは虫が良すぎるのではないかと、何度も自分に自問自答する。 最愛の人を抱いているのに、自分が何を求めているのかが分からなくなる。 まだ疲れが残っているティナは私に抱かれた後すぐに意識を手放した。 私はそっと寝室を出て、執務室の方へ向かう。 途中で執事のグラースに会ったので、お酒を持ってくるように指示をし、デスクチェアに腰をかけた。 もうすぐ満月が近いのか、窓の外は月明りが強く、あまり星は見られない。 「旦那様、お酒をお持ちい
私の口の中で質量が増していく彼の剛直は、どくどくと脈打ち、舌の動きに合わせてビクビクと震えている。 可愛い。 もっと気持ちよくしてあげたい。 だってコレは私のだから……あふれ出る精も私を気持ちよくしてくれる楔も、全部私だけのもの。 思い切り吸い上げると、嬌声を我慢出来ない彼は腰を浮かせて甘美な刺激に身を任せながら、鳴いている。 「はぁ、あっ、あぁ……ティナ……だめっ、もう……でる、あぁ……っ!!」 次の瞬間体を震わせ、私の口の中へ淫熱を発散した。 口の中は彼の精でいっぱいになり、喉を鳴らしながら飲み干していく。 「ん、んんっ……おいひぃ」 もっと、もっとほしい。 まだ昂りがおさまらない熱杭を綺麗にするかように舌を這わせていく。 ぴちゃぴちゃと卑猥な音が、また私の興奮を押し上げていく――――彼は私が離れそうにないので、されるがまま、快楽を享受していた。 「ティナ……きもちぃ……はぁ……ああっ……」 彼の理性がなくなるまで責め立てたい。 いつもならこんな意地悪な事を思ったりしないのに……契約印を刻んだから?彼は自分のものだと強烈に感じる。 もっと彼がほしい。 「あっ、だめ、またイクッ……あぁぁ!」 私の頭をつかみ、喉の奥へ、奥へと注ぎ込んでくる。 上からも下からも彼の精がほしくて、飲み干しながら下半身が疼いて仕方なくなっていく。 同時に肩にある魔女の証も痺れ、体中が熱い―――― 「んっ、ん…………」 体を震わせながら欲望を最後まで吐き出し、胸を上下させ、息を整えるドミニク様。 まだ……彼の頭の中が気持ちいい事しか考えられなくなってほしい。 私でいっぱいにしたい。 私は下着を脱ぎ去り、立ち上がって彼の股座に跨り、スカートの裾をたくし上げた。 そしてすっかり濡れそぼった自分の蜜口と、彼の昂りの先端がキスしている様を見せつけた。 「は……ぁ…………んっ…………」 彼の瞳が動揺で揺れている……互いの結合部がぬちゅぬちゅと音を立て、挿入りそうで挿入らない。 彼は待ちきれない様子で、どうにか挿入れようと腰が自然と動いていた。 「ティナ……っ、あっ……はやく……っ」 「ドム、ほしい?」 「ほしっ、はやく……挿入れてっ…………!」 「ふふっ、いい子……待てが出来たいい子にはご褒美をあげないと」 彼の唇に吸
王家主催の夜会当日―――― 両親に無理を言い、今日はとびきりオシャレをさせてもらった。 ごくごく薄い水色を基調としたプリンセスラインのドレスに、腕はオフショルダータイプのパフスリーブで、胸元は大胆にあけてみた。 髪は綺麗な真っすぐのホワイトブロンドだと両親にもよく褒められるので、あまり結い上げずにブルーグレーの蝶のモチーフの髪飾りだけを着ける。 首元には派手すぎないジュエリーと扇を持ってエントランスに向かうと、ドミニク様がすでに迎えに来てくれていて、私を階下で迎えてくれた。 「ティナ、凄く素敵だよ。見違えた……すっかり大人の女性だね」 ドミニク様は私のドレス姿
王家主催の夜会・7日前―――― ヴァッセル伯爵家の一人娘として生を受けた私は、クリスティーナと名付けられ、この春に19歳を迎えたばかりだった。 そして2歳年上の幼馴染の婚約者がいる。 見た目はお子ちゃまだと婚約者に言われるけれど、もう19歳だし、王家主催の夜会ではしっかりと貴族女性らしく振舞おうと意気込んでいた。 そんなある日、いつものように朝の食事をとろうとホールに入ると、すでにお父様とお母様が座っていたので私も急いで2人に挨拶をする。 「お父様、お母様、おはようございます」 私は完全にお母様に似たようで、髪色などもお母様と同じホワイトブロンドなので、まだまだ若
ツェットリーニ王国・オーレンブルク公爵邸―――――― 月がひと際美しく光り輝き、その形は欠けることなく全てをこの世界に露わにしている夜。 私は長年片想いしていた人の邸宅に来ていて、彼の力強い腕でベッドに縫い付けられながら体を暴かれている。 少し前までは、話せるだけで天にも昇るほど嬉しく、ただ見ているだけでもいいと思っていた。 それなのに……今ベッドでは彼の美しい指先が私の衣服を剥がしていき、舌が体を這っていく。 そのたびに私の体は女性としての悦びに跳ね上がり、得も言われぬ声を出しながら彼に応えてしまう。 こんな自分は知らない。
バタバタと王宮内を走り抜ける。 たしか裏庭にガゼボがあるから、早くそこへ行きたい……ほとんど人通りのない廊下を通り抜けて裏庭のガゼボにたどり着く。 そして中にあるベンチに座り、項垂れた。 「はぁ……はぁ…………っ」 荒い息を整えて、今の状況を頭の中で整理してみる。 一緒にいたナタリアという女性と結婚したいから、私との婚約を破棄したいと言うヤヌシュの顔は、今まで見た事もないくらい真剣で蕩けるような表情だった。 私には決して向けられることのなかった顔――。 本当に真実の愛を見つけたのね。 それは幼馴染として祝福してあげなければならなかったのかもしれない。 ただ、何もあの







